【インタビュー】菅沼聖隆「フェリア」リリース / ギター・ディスカバリー・シリーズ第7弾

才能豊かな新人ギタリストを発掘し、その道程をワンポイントのハイレゾ録音で残していくギター・ディスカバリー・シリーズ。第7弾に登場するのは、1996年生まれの菅沼聖隆。フォルクローレ・ミュージシャンの両親の下に育ち、幼い頃からラテン音楽に親しんで育った菅沼は、ギターの本場スペイン・アンダルシア地方の中心都市セビリアに留学し、21歳の若さで第8回セビリア国際ギター・コンクールを制覇した。その後、ボリビアを旅し、南米での豊かな音楽活動も経験している。<福田進一、ライナーノーツより>

 ジャケット

フェリア
菅沼聖隆(ギター)

AAC[320kbps]

FLAC[96.0KHz/24bit] FLAC[192.0KHz/24bit] FLAC[384.0KHz/24bit]

DSD[11.2MHz/1bit]

今回は菅沼聖隆さんご本人に加え、「ギター・ディスカバリー・シリーズ」をプロデュースしてきた福田進一さん、マイスター・ミュージック、トーンマイスターの平井義也さんにお話を伺うことができました。

 

インタビュー/テキスト:横倉 涼(mora)


菅沼聖隆 ⓒKanaKondo

――福田進一さんとマイスター・ミュージックで続いてきた「ギター・ディスカバリー・シリーズ」ですが、今回菅沼聖隆さんが参加するに至った経緯を教えてください。

菅沼 聖隆(以下、菅沼):自分の活動を世に出していくというか、そろそろ歴としたリサイタルとしてクラシックギターのコンサートをやりたいな、というのがあり色々な人に相談していたんです。そうして福田先生に救いの手を差し伸べていただいて(笑)、「ギター・ディスカバリー・シリーズ」で作品をリリースできる運びになりました。

福田 進一(以下、福田):始めて菅沼君に会ったのは、僕が今も住んでいる庄内町で行われた「庄内国際ギターフェスティバル」です。世界中から集まったゲストとの演奏会や公開レッスンを行っていたのですが、その時に生徒として参加していたのが彼でした。当時はまだ中学生でしたが、当時から演奏も体格も大人顔負けのものを持っていましたね。

その次に会ったのは彼が留学していたスペインのセビーリャです。留学中(2017年)にセビーリャ国際ギターコンクールで優勝もしていましたね。あれは留学何年目の時だっけ。

菅沼:21歳なので、3年目でしたね。

福田:彼をセビーリャで教えていたのが僕のパリでの後輩(注:フランシスコ・ベルニエール)だったという繋がりもあったんです。そういった十何年のご縁もありましたし、今回彼のギターを作っている名工・桜井正毅さんも「いま彼を録ってほしい」と強くプッシュしてくださいました。

菅沼:過去の国内コンクールでは最優秀賞を受賞するとギターがいただける、というものもあって、それで桜井さんとお会いする機会も何度かあったんです。自分が左利きで右利きのギターそのままだと弾けないものですから、桜井さんのご厚意で新たに左利きのギターを作って下さったり……そういったやり取りもあり、お付き合いが昔から続いていました。

 

そうした自分のルーツも作品に入れたくてこの曲を収録しました


――今回の選曲についてはどのように決められていったのでしょうか。

福田:このシリーズについては、僕は極力口を挟まずに本人がやりたい楽曲を尊重することにしています。今回についても取り上げる楽曲については菅沼君の希望の作品です。

菅沼:そうですね。かなり自由に決めさせてもらいました。今回の収録曲に共通して当てはまるのは、どれも留学中に練習していたものということですね。留学中に僕の先生であるフランシスコ・ベルニエール氏が生徒のためにジョイントコンサートのようなものを開催して下さっていたのですが、そういったところで反響のよかったものもセレクトしました。

アルバムタイトルにもなっている収録曲の「フェリア」は南米大陸で一番標高の高い多民族国家・ボリビアの民族音楽をもじったような曲なんです。僕はギターの基礎はクラシックで学びましたが、音楽に触れたきっかけは両親が演奏していたボリビア民族音楽でした。今作は個人的にも思い入れが深く、そうした自分のルーツも作品に入れたくてこの曲を収録しました。

――音楽に触れたルーツは南米の音楽、ギター演奏の基礎はクラシックで学ばれたとのことですが、ご自身の中でそれらはどのように共存しているものなのでしょうか。

菅沼:最近よく同様の質問をされますね(笑)。うまく言葉にするのは難しいですが、それぞれ一つの音楽として解決しています。クラシックの曲を演奏するときはその音楽に没頭しますし、南米のものでも同様です。演奏するとなったら自然と体がその音楽に溶け込んでしまいますね。自分から飛び込んでいって、大好きだったらその中に入るし、そうでなかったら出ていってしまうという感じです。

――様々な国や地域での演奏経験がおありだと思うのですが、やはり土地やお客さんの雰囲気が違うと演奏も影響を受けるものでしょうか。

菅沼:もうかなり影響は受けていましたね。特に僕が留学していたセビーリャというのは、現地の人だけでなく観光客もかなり多いところでした。なのでジョイントコンサートをやるとそういった方たちも「何だろう」と聴きにくるんです。すごく遠くの国から来た方もいたりして、それぞれのお客さんで音楽への感じ方や持っている文化・ルーツも全然違いますし反応もバラバラです。大人しく拍手してニコニコと聴いて下さる方もいれば、クラシックギターのコンサートなのに腕を振り上げて楽しんでいる人もいました。そういった場の雰囲気を元に作られているんじゃないか、と感じる楽曲もあります。

――では同じセビーリャにいても、毎回お客さんの雰囲気が違っていたのですね。

菅沼:そうですね。他の国に行っても同様の感覚はありましたし、地球上には本当に色んな人がいるんだな、と思う経験でした。

福田:ボリビアとかだと、また違うでしょう?

菅沼:ボリビアでは現地の人が多くて「こういう音楽を初めて聴いた」というリアクションをされることが多かったですね。ただ「ペーニャ」という、いわゆるライブハウスみたいなものにアーティストが集うような文化も少しずつ廃れてきて、盛り上げるために現地の人だけでなく外国の人も取り入れようという動きはあるようです。

福田:クラシックギターの演奏は中々聴いたことが無い人も多いんじゃない?

菅沼:ほぼ皆無と言っていいんじゃないでしょうか(笑)。綺麗な音というよりは、いかにその場の空気をビートに乗せるかを考えていて音質や楽器の品質は二の次、というか……そのスタイルで胸を張って活動しているアーティスト達もいて、ある意味羨ましい部分もありますね。

 

「ギターって面白い楽器だな」と思うところですね


――その国ごとの言語の違いを、楽曲や演奏に感じることはありますか。

菅沼:フラメンコギターなんかはもろに感じますし、クラシックギターでも聴いた時にイギリスの作曲家が作った曲だなと感じることがあったり、何となく音形と現地の方の喋り方がリンクする瞬間もあります。メロディーの置き方やそれに対応する弾き方、和音の並べ方など、国もそうですし作曲家自身の喋り方等にも感じますね。

以前福田先生がセビーリャにいらした頃に、ギタリスト・作曲家のデュージャン・ボグダノヴィチも来ていたことがありました。すごく面白い曲を書く方で、今も何曲か練習しているものがあるのですが、お会いした第一印象は曲から受けたものと結構違っていたんです。ただ話していってみると、喋り方や雰囲気の作り方とか、「あ、この人だ」と納得できました。

あとは昨年惜しくも亡くなられたアントン・ガルシア・アブリルという作曲家がいまして、僕自身がその人の楽曲を演奏したのと同じ年にセビーリャの国際コンクールでお会いすることができました。実際に喋ってみるとすごくゆったり喋るしマイペースで、かたや急に喋り出すようなこともある方で。楽曲についても、ゆったりした曲調で延々と前奏が続いているようなところに急にメインの楽器が飛び込んできたりするんです。

ですので出身国もあると思いますが、作曲家本人の性格や喋り方と作品がリンクすると感じる機会はありましたね。

福田:作曲家本人と会える機会というのは、ギターが一番多いんじゃないかな。ピアノやバイオリンだったらどうしても過去の人との対話になりますから。

菅沼:そこは自分の中でも「ギターって面白い楽器だな」と思うところですね。

 

より良い音を届けようという意味では(コンサートもレコーディングも)一緒なのかなと


――コンサートでの演奏とレコーディングの演奏で意識が異なる部分はございますか?

菅沼:そうですね、昔の自分だったら「ただギターの弦を弾(はじ)いているだけです」とそっけない答えを返していた気がするんですが(笑)。

スタジオで録音することによって自分の音が作品として残る、というのはコンサートと違うものと思っていましたが、改めて考えてみると意識はほとんど一緒なんですよね。コンサートでは目の前に聴衆がいますが、録音した作品を聴いてくれる方達のことも聴衆と捉えた時に、より良い音をそこに届けようという意味では一緒なのかなと思いました。

 

――これまで本シリーズも含めて数々のギター作品を録音してきた平井さんに伺いたいのですが、今回は普段のギターのレコーディングと異なる部分はありましたか?

平井 義也(以下、平井):機材のセッティングなどはこれまでのギターの録音と同様ですが、菅沼さんは色々な国での演奏を経験されているということもあって、音楽にすごく”雰囲気”があるんです。その雰囲気をいかにレコーディングで出せるかが一つの課題でした。今回ハイレゾの384KHzでレコーディングして、その雰囲気が聴いている人に伝わるようなものになっているのではないかと思います。

若くして国内外での演奏経験が豊かな菅沼さんの音は迫力が有りダイナミックです。それは演奏家としてたいへんな財産だと思います。ですからそのダイナミクスを上手く伝えたいという思いもありました。

福田:中学生で会った時に、もう身体は僕より大きかったよね。やはり弦をはじく時の指の質量はすごく出てくるもので、例えば巨匠アンドレス・セゴビアも若い頃からそういう体格でした。

そういえばこの前押尾コータローさんと演奏する機会があって、あの方もマサ(菅沼)みたいにいい手をしてるんだよ!素晴らしい手でした。弦の種類はスチール弦なので違いますが、肉体的にも恵まれている方なんだとびっくりしました。

平井:ギタリストでは、ホセ・ルイス・ゴンサレスもとても手が大きかったですね。

福田:彼はセゴビアのお弟子さんで、平井さんが初めて録音された外国のギタリストでしたよね。「音の美しさだったらかなわない」とまでセゴビアに言わせた人でした。身長は僕より低いんだけど、それでも手は大きかったですからね。ジョン・ウィリアムスなんかも同様でした。

世界中のギタリストと手の比べっこはしてきましたが、日本人で久しぶりに僕より大きかったのが菅沼君と押尾コータローさんでした。ギターは弦長の長い楽器ですし、手の大小によって人それぞれ弾きやすさや、苦労する部分もあると思います。

菅沼:そうですね。楽器自体が大きいですし、押さえる場所も多くて幅も広いですから。僕なんかは逆にデカすぎて、どのフレットの方が押さえやすいとかがよくわからなかったりもします。大きくなりすぎるのも考えものかなと(笑)。

福田:とはいえものすごい体格と大きい手でも迫力のない音を出すギタリストも見たことがありますし、逆にピアニストですが小さな手でも難曲を弾きこなして素晴らしい演奏をする方もいます。やはり一概には言えないところが音楽は面白いです。

菅沼:まさしく十人十色ですね。

 

自分そのものが映っている音……僕自身の感動がそのまま伝わればいいなと思っています


――本作はハイレゾ音源でも配信されますが、菅沼さんご自身が音楽を聴く時は環境などにこだわりはありますか。またリスナーの方にはどんな部分を特に聴いてほしいですか。

菅沼:コロナ禍になって動画を撮ったり、デジタル配信をしたりするまではそんなにこだわりはなかったです。ただ最近はスピーカー等も増えだして、ハイレゾ音源というもののありがたさにも気づいてきました。

僕の演奏はギターらしい美しい部分ももちろんあるのですが、手が動いた時のノイズとか、場合によっては雑音ととられるような音も聴いてほしいと思っています。今回の録音は、自分で思ってもみなかった演奏への向き合い方、というものを記録してくださっていました。それを聴いた時にすごく感動したんです。

ギターが奏でる音楽だけじゃなくて、自分そのものが映っている音……それがハイレゾで聴けるならぜひ聴いてほしいです。改めて平井さんの凄さに脱帽した瞬間でしたし、こうして本当の姿を映してくれているというのは、ギタリストにとってこれ以上ない幸せだと思いました。

普段はそういう雑音って、雑音として排除されてしまう。そうして何だか詰まったような音だけが出ているのは気持ち悪いとも感じるんです。演奏している自分だからかもしれませんが、今回の録音は映像が無くとも音だけで(演奏している)姿が見える気がしました。素晴らしい録音だとこんな情景になるんだと、僕自身のそうした感動がリスナーの方にもそのまま伝わればいいなと思っています。

――以前福田さんにお話を伺った際には、作品によっては楽音以外の爪が当たるノイズなどにフォーカスされた録音になっている、という話題が出ました。

福田:ハイレゾ、特に384KHzでより高解像度になることでギターから出ている音だけではなく、反射音や周りの空気も含めたトータルな全身像がより映るようになっている部分はあると思います。

菅沼:ノイズと言われたらそうなのかもしれませんが、それが全然気にならないというか。雑音だから駄目とかではなく、それがあるからこそ綺麗な音楽になるという、そこがとにかく自分としては感動しました。

福田:やはり初期の頃のPCM録音は正直ギターと相性が良くないと感じることがあって、鋭いチクチクしたような部分が出てしまっている録音も多かったように思います。ハイレゾ、ワンポイントでの録音は滑らかで、かつ先ほども言ったようにあらゆる要素を収録している点が素晴らしいです。

みんな昔のアナログテープに帰りたがってるような時期があったのですが、もうそこは抜けたように思いますね。(ハイレゾには)アナログでは表現できないような三次元的な立体感を感じます。

平井:アナログですとテープヒスの「シ――」という音が常に被ってきていたのですが、384KHzになると一つの空間がそのまま目の前に広がって気が付いたら自分もそこにいる、そんな雰囲気が出せると思っています。菅沼さんが仰っていた「自分が映っている」という感覚もまさにそうではないでしょうか。

福田:どこまでを楽音としてとらえるか、の幅は384KHzと普通の録音でかなり異なってきます。僕もよく、平井さんのところで編集段階のきめの細かい音を聴いてから自宅で44.1KHzなりに変換されたファイルを聴いてみると「あれっ」ということがあったりします。楽音で鳴っていたはずの音が鳴っておらず、おかしいなと思って改めて平井さんのところで聴くとやはり鳴っている……そんな経験は何度もありました。

そんな面白さも難しさもある中で何を録って何を抽出していくか、それはエディターである平井さんにかかっている部分が大きいです。

今回の録音に関しては準備もしっかりして、難しい曲もすごく少ないテイク数で済みましたしスムーズでしたね。菅沼君のセンスもあって、ノイズも楽音として聴けるものになっていると思います。非常に楽しかったです。

菅沼:こちらこそ、本当に楽しかったです。色々な音がしっかり聴こえてくるので、録音した中で気になる瞬間があってもすぐに拾い上げることができました。今回の作品に関しては、こう言ってはなんですが何も心配することは無かったです。

 

――最後に、リスナーの皆様にメッセージをお願いいたします。

福田:「フェリア」という曲を聴いてもらえれば、皆さん面白いと思っていただけるはずです。特にクラシックの方に聴いてほしいです。「小太鼓とギターの二重奏なの?」と言う方もいたくらい、別の人間が弾いているようで……そんなマジカルな瞬間がいくつもあります。クラシックと民族音楽に挟まれた彼ならではの”多重人格”な感じが僕は好きです。これは聴きもんでっせ!

平井:今回も福田さんに素晴らしいアーティストをご紹介いただきまして、「ギター・ディスカバリー・シリーズ」を立ち上げた甲斐があったと改めて思えました。今回で第7弾ですが、ぜひ今後も続けていきたいです。菅沼さんは20代にして既に風格のあるアーティストですので今後にも期待しておりますし、我々もその音楽の良さを出来るだけ皆様に伝えられるよう頑張りたいと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。

菅沼:僕が遊びでギターを触り出してから、もう20年ぐらいになります。幼少期の頃に基盤となったボリビア音楽から留学に至るまで、練習してきた曲を一つの作品に凝縮させました。菅沼聖隆という一人のギタリストとしての像を、音で感じていただきたいです。


プロフィール

菅沼 聖隆

1996年東京生まれ、26歳。
 2歳半ば頃、ギターに興味を持ち出す。5歳より村治 昇氏が主宰する早期才能ギター教室にて村治 昇氏に師事し、クラシックギターに出会う。その後、坪川真理子氏、金庸太氏両氏にも師事。また中学3年生頃、作曲和声学、ソルフェージュを三上徹氏に師事。現在も作曲を続けている。
 2014年10月、フランシスコ・ベルニエール氏に師事するため、スペインのセビーリャ高等音楽院へ留学。2019年2月20日、自身で作曲したギターと弦楽四重奏のためのソナチネ第1番を、スペインのセビーリャで初演。
2012年~現在、日本国内外の多数のコンクールにおいて受賞・入賞を果たす。

【主な受賞歴】
パブロ・マルケス、ウィリアム・カネンガイザーなどの海外のギタリストのマスタークラスにも積極的に受け、2010年、福田進一が監督する庄内国際ギターフェスティバルで最優秀生賞を受賞。
2015年11月、スペインのグラナダにあるアルムニェーカルにて行われた第31回アンドレス・セゴビア国際ギターコンクールにおいて3位を受賞。
2017年10月、第8回セビーリャ国際ギターコンクールにて優勝。
2019年5月に留学先のセビーリャ高等音楽院の最終難関試験にて、審査員満場一致で合格し、ギター最優秀生に送られる「Matrícula de honor」を受賞。

クラシック以外の音楽ジャンルに於いても積極的な活動を始め、南米フォルクローレ、ラテン、そしてフラメンコギターなど、多くのレパートリーを弾きこなす。
 小林 智詠氏と共に「Masa&Chiei」として2012年07月27日にラテン音楽系ファーストアルバム「El baile de la Juventud (若者の舞踏~)」をリリース。様々な活動を繰り広げ、今現在もスペインで研鑽を積んでいる。
 2019年03月下旬にボリビアへ足を運び、同月30日に世界的なチャランゴ奏者「Willy Ríos」と”Dúo FusiónMasawi”として共演を実現。同年04月04日には、スクレでの文化的行動の功績が認められ、「伝統文化促進証明」を授与される。

 

福田 進一

1955年大阪船場に生まれる。11才より故斎藤達也(1942-2006)に師事。77年に渡仏し、アルベルト・ポンセ、オスカー・ギリアの両名教授に師事した後、81年パリ国際ギターコンクールでグランプリ優勝、さらに内外で輝かしい賞歴を重ねた。以後35年に亘り、ソロ・リサイタル、主要オーケストラとの協演、エドゥアルド・フェルナンデスとのデュオをはじめとする超一流ソリストとの共演など、福田の活動は留まることを知らない。今世紀に入り、既に世界数十カ国の主要都市に招かれ、リサイタル、マスタークラスを開催。

19世紀ギター音楽の再発見から現代音楽まで、ボーダーレスな音楽への姿勢は世界中のファンを魅了している。

演奏活動のかたわら、教育活動にも力を注ぎ、その門下から鈴木大介、村治佳織、大萩康司といったギター界の実力派スターたちを輩出。内外を問わず、続く多くの若手ギタリスト達にも強い影響を与えている。

キューバの巨匠レオ・ブローウェルから協奏曲「コンチェルト・ダ・レクイエム」を献呈され、08年にライン州立響と世界初演。続いて作曲家自身の指揮によりコルドバ管弦楽団(スペイン)と再演、さらに、11年にはサンパウロ交響楽団(ブラジル)との南米初演など世界各地で大成功を収め、フェルナンデスとの共演で、ブローウェルの2つのギターのための「旅人たちのソナタ」を世界初演。12年には、ドイツ、台湾、キューバ、カナダ、北米へツアー。13年夏には北カリフォルニアのメンドシーノ音楽祭で「アランフェス協奏曲」、武満「夢の縁へ」を演奏。14年はアリカンテ大学(スペイン)でギターマスターの客員教授、さらに14年と16年にセビリア国際ギターフェスティバルのメインゲストに招待された。

17年からウィーンフィル元コンサートマスター、ライナー・キュッヒルとの演奏活動を開始。

18年4月には全米6都市でのソロ・コンサートツアーで好評を博した。

2019年3月にはモスクワ・チャイコフスキーホールで、ロシア国立スヴェトラーノフ交響楽団と共演、8月にはブローウェルと共に台北国際ギターフェスティバルに参加。9月にはジュネーヴ、パリなどのヨーロッパ・ツアーも予定されている。

また、2019年11月公開の映画「マチネの終わりに」(監督:西谷弘、主演:福山雅治、原作:平野啓一郎)ではクラシックギター監修を務めている。

ディスコグラフィーは既に90枚を超え、近年ではスペイン音楽第2集「セビリア風幻想曲」が平成15年度第58回文化庁芸術祭賞優秀賞を受賞。07年「福田進一・アランフェス協奏曲」(日本コロムビア)、10年より近代ギター音楽の父、タレガの作品集(マイスターミュージック)を連続リリース。11年秋からは「バッハ作品集」のシリーズを開始し、19年にはチェロ組曲全曲を含む全6集を完結予定。さらに、世界レーベルNAXOSから「現代日本のギター音楽」シリーズをスタートし、18年8月には第4集がリリースされた。

17年には自伝的エッセイ「6弦上のアリア」を上梓。

平成19年度、日本の優れた音楽文化を世界に紹介した功績により「外務大臣表彰」を受賞。さらに平成23年度の芸術選奨「文部科学大臣賞」を受賞した。

上海音楽院、大阪音楽大学、広島エリザベト音楽大学、昭和音楽大学、各音大のギター科客員教授。さらに東京、アレッサンドリア、ハインスベルグ、コブレンツ、全米ギター協会など、主要国際ギターコンクールの審査員を歴任している。

 

平井 義也

 大阪電気通信大学 電子工学課を卒業後、渡独。ドイツ国立デトモルト音楽大学(現在のErich-Thienhaus-Institut) にて、音楽学、音響工学、作曲法、和声楽、ピアノ演奏、テューバ演奏を学ぶ。ドイツ・グラモフォン及び北ドイツ放送局でインターンとして研鑽を積み、カール・リヒター、カール・ベーム、マウリッオ・ポリーニ、ペーター・シユライヤーなどの録音に参加。デトモルト音楽大学卒業と同時にドイツ国家資格ディプロム・トーンマイスターの称号を取得。
 帰国後、ソニー・ミュージックに入社。その後独立し、クラシック音楽専門レーベル「マイスター・ミュージック」を立ち上げる。 
 現在、世界に十数ペアしかない、デトリック・デ・ゲアール製(スウェーデン)マイクロフォンを使用してのDXD384Khz高解像度レコーディングを中心に、空間オーディオ音源制作、ハイレゾ向けマスタリングなどを行う。


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